何度書いても英単語を覚えられないのはなぜ?「音韻認識」から考える

「英単語を何度練習しても読めるようにならない」

「昨日読めた単語を、今日はまた間違えている」

「中学1年生の定期テストで、筆記の部分がほとんど書けなかった(選択肢の問題には正解が多い)」

このような悩みを持つ保護者の方や生徒さんから、当教室にご連絡をいただきます。

そんな様子を見ると、親御さんはつい「もっと練習させないと」と考えてしまうかもしれません。

しかし、英単語を覚えられない、読めない原因は、練習量や本人のやる気だけで決まるものではありません。丸ごと暗記する方法だけでは学習の負担が大きくなり、やがて単語を覚えきれず、授業についていけなくなることもあります。

英単語を読む力は、一つではない

英単語を読めない子のつまずきは一つではなく、複数の要因が重なっていることも多いです。今回は、その中でも音に関する困難を分けて説明します。

フォニックス以前に、英語の音を捉えることが難しい子がいます。 音は聞こえていても、単語を構成する音を分けて捉えにくいのです。

このような音に関する処理全般を phonological processing といいます。英語圏では、音韻処理や音韻認識の難しさが、ディスレクシアに見られる主要な特徴の一つとして研究されてきました。ただし、読み書きの困難には、ほかの要因も関係すると考えられています。

1.単語を音の塊として捉えてしまう

vest → /v/ /e/ /s/ /t/

このように、単語はいくつかの音に分けて捉えることができます。

読み書きに困難のある子の中には、vestを細かい音の並びとしてではなく、「服のベスト」という意味を持つ一つの音の塊として捉えていることがあります。

さらに、文脈の捉え方や語彙の処理など、ほかの要因が重なることで、bestやwestのような音の似た単語ではなく、shirtやjacketのような意味的に関連する単語として発音してしまうこともあります。

その子の中では、vest → /v/ /e/ /s/ /t/ という音のつながりよりも、vest → 服 → shirt / jacket という意味のつながりのほうが強く働いている可能性があります。

これは音韻認識の弱さだけで起こるとは限りません。ただ、単語を構成する一つひとつの音を細かく捉えにくいことが、ほかの要因と重なって読み間違いに関係している可能性があります。

2.音の並びを混同する

例えば、tapという単語を聞き取ったとき、それをpatと勘違いしてしまうことがあります。使われている音はほぼ同じでも、音の順番を頭の中で入れ替えてしまうことがあるのです。

音が全部聞こえていても、/t/ /æ/ /p/ というそれぞれの音が、どの位置に、どの順番で並んでいるのかを正確に捉えたり、頭の中で保持したりすることが難しい場合があります。

音韻認識とは何か

「音韻認識」とは、連続して聞こえる英語の音の流れを、単語を構成する一つひとつの音に分けたり、分けた音を再びつなげたりする力です。

「音の処理」は、話し言葉の音を頭の中で認識し、覚え、必要に応じて扱う力全体を指す大きな概念です。その中の一つが音韻認識です。

音韻認識は、「言葉は意味のある一つの塊であるだけでなく、いくつかの音の単位からできている」と気づき、その音を分けたり、つなげたり、入れ替えたりする力です。

米国教育省の教育科学研究所(IES)も、音韻認識を、文字の知識とは別に、話し言葉を構成する音を見つけたり操作したりする力として扱っています。IES「Phonological Awareness Training plus Letter Knowledge Training」

難しい言葉に聞こえますが、この段階では文字を使いません。

例えば、大人がcatの音を「/k/・/æ/・/t/」とゆっくり3つに分けて言い、それを聞いた子どもがcatと一つの言葉に戻せるかを見ます。反対に、catと聞いて、最初・真ん中・最後の音に分けられるかを見ることもできます。

英語を聞くとき、実際には音と音の間に分かりやすい区切りがあるわけではありません。流れるように聞こえる英語の中から必要な音を見つける力が、読むことやスペルを考える土台になります。

音韻認識を確認するときの主な要素

1.Isolation(音を取り出す)

単語の中から、特定の音を一つ取り出す力です。「penの最初の音は?」なら /p/、「busの最後の音は?」なら /s/ と答えます。

2.Blending(音をつなげる)

分かれている音を、順番どおりにつないで一つの単語にする力です。例えば、/r/・/e/・/d/ と聞いてredと答えます。

3.Segmentation(音を分ける)

一つの単語を、単語の中にある音へ分解する力です。例えば、chatを聞いて /tʃ/・/æ/・/t/ の3音に分けます。chatは4文字ですが、chが一つの音を表すため、音は3つです。

4.Deletion(音を取り除く)

単語から指定された音を一つ取り除く力です。例えば、「pestから最初の /p/ を取ると?」と聞かれて、estと答えます。このとき、pestやestの意味を知る必要はありません。

5.Substitution(音を入れ替える)

単語の中の一つの音を、別の音に置き換える力です。例えば、「pinの /p//t/ に変えると?」と聞かれて、tinと答えます。

このように、音韻認識は単に発音をまねする力ではありません。単語の中の音に意識を向け、取り出す、つなげる、分ける、取り除く、入れ替えるといった操作をする力です。

厳密には、音節や韻などを含む広い力を「音韻認識」、一つひとつの音素を扱う力を「音素認識」と呼びます。Reading Rocketsの確認例も参考になります。

音韻認識はスペリングにも影響する

英単語を書くには、聞こえた単語をそのまま文字にするのではなく、まず単語の中にある音を一つずつ取り出す必要があります。そして、それぞれの音に合う文字を選び、正しい順番に並べていきます。つまり、スペリングは音を分けて捉えることから始まります。

例えば、brushという単語を書きたいとします。

brush
↓ 音に分ける
/b/・/r/・/ʌ/・/ʃ/
↓ それぞれの音を表す文字を選ぶ
b・r・u・sh
↓ スペルにする
brush

話し言葉 → 音に分ける → 音に合う文字を選ぶ → スペリング

/ʃ/ という音にはshを使うと知っていても、brushの最後にその音が入っていると気づけなければ、フォニックスの知識を使う場所が分かりません。

そのため、何度書いてもスペルを覚えにくい子には、文字を書かせる前に、聞いた単語を音だけで分けられるか確認することが大切です。

読むときは逆方向になる

brush
↓ 文字のまとまりを見る
b | r | u | sh
↓ 文字を音に変える
/b/・/r/・/ʌ/・/ʃ/
↓ 音をつなげる
brush

文字 → 音 → ブレンディング → 単語

英単語を読むには、単語の音を扱う力、文字と音の対応を知るフォニックス、そして分けた音を一つの単語につなげるブレンディングが必要です。

音素認識+文字と音の対応+ブレンディング

この3つがつながることで、初めて見る単語も自分で読み方を考えやすくなります。IESの初期読字ガイドでも、話し言葉の音への気づきと文字・音の対応を結びつけ、音を左から順につないで単語を読む指導が推奨されています。

「アルファベットの教室」で学べること

「アルファベットの教室」では、基礎的なフォニックスに加え、一般的なフォニックスだけでは読み解きにくい英単語にも対応できるよう、発展的な読み方やスペルのルールを分かりやすく解説しています。また、今回の記事で紹介した音韻認識の練習も授業内で行います。

暗記だけに頼らず、初めて見る単語でも「この文字はこの音」「この部分には、このスペルのルールが使われている」と、自分で読み方やつづりを考えられる力を育てます。

参考資料

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