学力は高いのに、英語だけ読めない――お問い合わせで最も多い中学1年生のケース
「中学に入ってから、英語がまったくできません」
お問い合わせの中で、とても多いご相談です。
親御さんからお話を伺うと、中学受験を終えたばかりの中学1年生。基礎学力も理解力も高い。それなのに、英語だけがどうしても読めないとのこと。
お問い合わせが増えるのは、6月から9月ごろ
このようなご連絡が増えるのは、新学期の慌ただしさが少し落ち着く6月ごろから、2回目の定期テストを終えて9月ごろまでです。ちなみにこのようなご相談(中1でのつまづき)をくださるのは、ほとんどが男の子の保護者です。
親御さんとの面談では「どうにかしないといけない」と少し焦りが見られることもあります。
「baseballという単語が書けない。でも、英単語の書き方をどう教えたらよいのか分からない。自分は学生時代何度か書いて&読んで覚えたので、子どもにも紙に30回書かせてみた。そのときは書けるようになったが、翌日にはまた書けなくなっている。」
数学や国語はできるのに、英語だけ急に歯が立たない。親御さんも「なぜ?」となりますよね。
有名な私立中学校に通う子も少なくありません。学校名を聞くと、誰もが知っているような私立中学校に通っている生徒もいます。
中学受験を乗り越えてきて、基礎学力も高い。説明すれば理解できるし、考える力もある。決して「勉強が苦手な子」ではありません。
ところが英語になると、簡単な単語でも読むのが難しくなってしまいます。
初めて出会う「勉強しても分からない教科」
それまで勉強すれば知識が身につき、理解でき、それがテストの点にも反映されてきた。中学受験でも結果を出してきた。
そんな生徒にとって(そして親御さんにとっても)「頑張っているのに、全然分からない」という経験は、かなり精神的にくるかと思います。
「英語はやりたくない」
「どうせ自分にはできない」
こうした言葉が出るようになり、教材を見るだけで強い拒否反応を示す子もいます。読めないことそのものより、それまで持っていた自信を失ってしまうことのほうが心配になる場合もあります。
ディスレクシアの傾向は比較的軽いことが多い
私がこれまで見てきたこのタイプの生徒は、ディスレクシアの傾向があったとしても比較的軽いか、ディスレクシアには該当しないケースがほとんどです。
読み書きの得意・不得意にはグラデーションがあります。「ここからがディスレクシアです」と、一本の線できれいに分けられるものではありません。
いくつかの小さな苦手が重なり、英単語を読むところで一気に困難が表面化している子もいます。
英語の「同じパターン」に気づきにくい
理由の一つとして、英単語の中に規則性を見つけることが苦手な場合があります。
英語を学んでいると、たとえばname、game、sameを見て、「あれ、どれも最後にeがある。aの読み方も同じだな」と、意識的か無意識かにかかわらず気づく子がいます。
light、night、rightを見て、ighは同じ音になると発見する子もいます。
こうして、一つの単語で覚えたことを次の単語にも使えるようになります。脳内に、小さな「英語のルール集」が自然と作られていくようなイメージです。
ところが、この共通点を自然に拾うのが少し苦手な子もいます。単語を毎回「まったく新しいもの」として覚えようとするので、結局はすべて丸暗記することになります。
ローマ字の知識が邪魔をすることも
もう一つ多いのが、ローマ字の読み方をそのまま英語に持ち込んでいるケースです。
たとえばdeskを、子音の間に母音を補い、desukuのように捉えてしまうことがあります。
日本語は「子音+母音」のまとまりが多い言語です。一方、英語ではdeskの最後のskのように、子音が続くことも珍しくありません。
ローマ字の知識が間違っているわけではありません。英語を読むための別のルールを、まだ教わっていないだけなのです。
英語の音を細かく捉えにくい
聞いた英語の音を同じように出すことや、似た音を聞き分けることが苦手な子もいます。
ここでいう「聞きにくさ」は、聴力の良し悪しという意味ではありません。
単語を細かな音に分けて捉える力を「音韻認識」といいます。たとえばdeskを聞いて、/d/ /e/ /s/ /k/という音の並びに気づける力です。
さらに、音の順番を一時的に覚えておく力や、聞いた音と口の動きを結びつける力も関係します。
ここが苦手だと、発音をまねしにくいだけでなく、「この単語には、どの音が入っているの?」というところから曖昧になります。そうなると、読み方やスペルを覚えるのも当然大変です。本人はちゃんと頑張っているのに、です。
このタイプの生徒に見られる「少し不器用なところ」
総じて、このタイプの生徒には、勉強以外の場面でも少し不器用さが見られることがあります。
たとえば、球技やチームスポーツが苦手だったり、手先を使う細かな作業に時間がかかったり、体の動きをうまく合わせるのが難しかったりします。
イギリスで学習支援や教員研修を行うDavis Learning Foundationが紹介する「ディスレクシアに見られる37の特徴」にも、次の項目があります。
動きがぎこちない、体の協調運動が苦手、球技やチームスポーツが苦手、手先や全身を使う運動に難しさがある、乗り物酔いをしやすい。
ただし、これはディスレクシアを診断するためのチェックリストではなく、あくまで見られることのある特徴の一つです。不器用だからディスレクシアというわけではありませんし、ディスレクシアがあっても運動が得意な人はもちろんいます。
参考:Davis Learning Foundation「37 Common Characteristics of Dyslexia」
フォニックスを教えると、吸収が早い
このタイプの生徒は、もともとの理解力が高いことが多いため、フォニックスを体系的に教えると吸収が早いです。
ただし、中学1年生の男の子にとって、英語らしい音を声に出すのは少し恥ずかしいもの。まずはその恥ずかしさを取っ払うことが、教える側の最初のハードルだったりします。
文字と音の関係を一つずつ整理すると、「英語にもルールがあったんだ」「全部を丸暗記しなくていいんだ」と分かります。
もちろん、すべての英単語がフォニックスの基本ルールだけで読めるわけではありません。基本ルールだけでは読みづらく、別に覚える必要のある単語もあります。
それでも、何の手がかりもなく一語ずつ暗記する状態から、「この部分は、このルールで読めそう」と考えられる状態になる。その差はとても大きいです。
数か月ほど学習すると、覚えた規則を別の単語にも当てはめ、「自分でも英単語が読める」「耳で聞いた英語を書ける」と実感できるようになり、少しずつ自信も戻ってきます。
私の授業では、フォニックスを通して英語を読める・書けるようにすることが一番の目標です。ただ、それと同じくらい、特に授業を始めた最初の数か月は、「自分にも英語ができる」という自信を取り戻すことを大切にしています。
あとがき?
私自身にも、少し似たような経験があります。
私はADHDの傾向があります。診断を受けたわけではないですが、ADHDの特徴、特に注意散漫型のところによく当てはまります。学生時代は受験日当日、受験票を忘れたり、常に忘れものばかりしていました。
大学までの勉強は、なんとかこなすことができました。忘れ物をしたり、ミスをしたりすることはたびたびありましたが、それでも勉強そのものでは大きく困らずにきました。
しかし、社会人になって働き始めてからが本当に大変でした。
仕事で単純な作業を繰り返さなければならないとき、わたしだけ異様にミスの連発。周りの人たちは、同じ作業を何事もなく、簡単にこなしているように見えました。実際やっていることは、難しいことではなく、書類の不備を探すような単調作業です。
「こんなに簡単なことなのに、どうして私はできないんだろう」
ダブルチェックしてもまだ見落としがあり、周りにも迷惑を掛けてします。この時期はとても落ち込みました。自信を失い、精神的にもしんどかった思い出です。
今振り返ると自分の特性と、仕事内容、というか業界そのものが合っていなかったんだなと思います。私が大学生のころはADHDという概念も浸透しておらず、自分の特性を分からずに就職してしまったな、と。もちろんそんな訳でその会社は退職し、その後英語を教え始めることになります。
未だにミスは多いですがブログなどは更新前にAIで簡単に校正できるようになり、本当に助かっています。